研究概要 |
キラルビナフトールから得られるリン酸触媒のうち立体選択性をほとんど示さない(44:56)触媒1(R=H,Rは3,3'位置換基)、中程度(78:22)の触媒2(R=Ph)、および高い選択性(95:5))を持つ触媒3(R=1-Binaph)を用いるイミン4とアセチルアセトン5の不斉Mannich反応について反応の経路計算をHF/3-21G*、B3LYP/6-31G*、B3LYP/6-31+G*、oniom(B3LYP/6-31+G*:HF/3-21G*)、oniom(MP2/6-31+G*:HF/3-21G*)レベルで行なった。その結果、キラルリン酸触媒では3,3'位置に置換基がないと立体選択性がほとんどないことが明らかとなり、さらに3,3'位置にフェニル基がついた場合は反応系をすっぽり包むには足らず、長く伸びたビフェニル基をつけることにより高い立体選択性を実現していることもわかった。しかし、触媒3ではビフェニル基とビナフチル部分との2面角により4つのコンフォマーが可能で反応基質の組み合わせにより32個もの遷移状態構造が可能であることが分かった。それら全てを計算しており、実験で得られる立体選択性は計算によりほぼ再現されてはいるが、立体制御因子の解明には至っていない。上記計算結果から計算方法としては高いレベルのniom法を用いるよりはB3LYP/6-31G*で行なう方が実験結果と一致するエネルギー差が得られ、かつ多くのコンフォメーション解析を行なうのに計算時間の点から適していることが分かった。また、上記以外の触媒を使った計算も行ない、ビナフチル基のなす2面角が立体選択性に大きくかかわっていることが分かった。このような比較により新たな触媒のデザインに向けた基礎的知見が得られた。また、インドールとの不斉Friedel-Crafts反応についても一部計算を行なった。
|