C-F単位とフェノール性水酸基の水素結合C-F…HOが一般的に存在することを証明するために2-fluorophenyldiphenylmethanolと1-fluoro-4-methyl-8-naphtholを合成しX線結晶構造解析により構造を明らかにした。その結果、水酸基のOHプロトンはフッ素原子の方向に位置していること、C-F…HO距離はそれぞれのvan der Waals半径の合計より小さいことからフッ素原子がプロトンを引きつけていることがわかった。また、^1H-NMRではOHプロトンはフッ素原子とカップリングしており、また参照化合物に比べて著しい低磁場シフトを起こしていることからC-F…HO水素結合の存在が確かめられた。また、C-Fが、遷移金属イオンやランタノイドイオンと相互作用することを大環状化合物を用いて明らかにした。ピリジン環4枚、フルオロベンゼン環2枚をもつ大環状かご形化合物と各種金属イオン(アルカリ金属イオン以外)との錯体を調製し^<19>F-NMRを用いてフッ素シグナルの化学シフトを測定した。その結果、中心金属のイオン半径と化学シフトは比例関係にあり、金属の種類によっていくつかのグループに分かれることを明らかにした。以上により本研究の目的を達成できた。これらにより、近年長足の進歩を遂げてきたフッ素の化学に新たな基礎的な情報を付け加えることができた。これらの研究結果の応用として、・含フッ素基質に対する有機金属試薬の反応メカニズムの解釈、・フッ素ドナーを持つ新規ホストーゲスト化学への応用、超分子構造構築の基礎概念への応用、・対アニオンとしてフッ素原子を含む新たな活性能を持つ触媒の設計、・含フッ素薬理活性物質の開発に重要なデータの提供、等が考えられる。将来的にはより多くの実例を見出すことでこれら相互作用の一般化を図りたい。
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