平成20年度は、以下の二点について主に検討し、各項目に示す結果を得た。 1.平成19年度までに得られたポリアニオン及び新規ポリアニオンの単結晶化・構造解析:懸案であったP:W=3:6アニオンについては良好な結晶が得られなかったが、ニリン酸系(P2):W=2:14については、いくつかの異なる陽イオンの組み合わせにより結晶化・構造解析を行い、アニオンのコンフォメーションや三次元構造への影響を検討した。また、環状P:W=4:12アニオンでは良好な構造決定を行うことが出来たが、陽イオン数において元素分析との対応に課題がある。その他、新規アニオンとして(P2):W=2:9アニオンおよび、予備的実験として行ったB(III)をヘテロ原子とする系でB:W=1:8の構造を見出すことが出来た。 2.多核NMRによる溶液内錯形成挙動の追跡: 環状P:W=4:12アニオン形成の陽イオン、pH、H_2O_2、全濃度、P/W依存性を^<31>P NMRにより解明した。しかし、陽イオン(^<39>K、^<97>Rb、^<15>N)による検討は良好な結果を得られなかった。比較対照として行ったP-Mo系では、キャップ付欠損Keggin型P:Mo=1:10アニオン形成の陽イオン、pH、H_2O_2、全濃度、P/Mo依存性を31P NMRにより明らかにした。P:W=2:6、3:6アニオン形成への溶媒組成の影響の^<31>P NMRによる検討では、特にP:W=3:6アニオンについて依存性が見られた。ニリン酸系では、陽イオン、pH、H_2O_2、全濃度、(P2)/W依存のシグナルが^<31>P NMRで観測された。得られた結晶の固体^<31>P NMRと併用し、シグナルの同定を検討中である。
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