研究概要 |
カルベン様炭素配位子であるカルボジホスホラン(R3P=C=PR3)は触媒種の活性化と保護、反応の立体制御といった、支持配位子として求められる機能を高い次元で達成できると期待できる。19年度の研究において、Ph3P=C=PPh3と10族金属であるPd錯体との反応によって、カルボジボスホランの単座配位錯体ならびに、フェニル基のオルトメタル化を伴った2座(キレート型)、3座(ピンサー型)で配位した錯体を合成することに成功した。今年度は9族金属であるRh錯体を用い、カルボジホスホランの配位様式の自在制御を目的に、このオルトメタル化に対する金属上の支持配位子の電子的、立体的影響を詳細に検討した。 出発錯体にはカルボジホスホランの1つのフェニル基がすでにオルトメタル化したキレート配位錯体(cod)Rh{(C6H4)PPh2CPPh3-κ2C,C'}を用いた。この錯体と電子供与性が強いPMe3との反応では、CODとPMe3との置換反応を伴って速やかに2つ目のフェニル基のオルトメタル化が進行し、ピンサー型錯体を与える。これに対して、PMe3と同じ単座配位子であるが電子供与性の小さなPhNCとの反応では、CODとの置換のみが起こり、更なるオルトメタル化は進行しなかった。また、PMe3と同程度に電子供与性が高いキレート配位子であるdmpeとの反応においてもオルトメタル化は進行せず、CODの置換のみが観測された。以上の結果から、オルトメタル化には支持配位子の単座配位が重要であり、さらに電子供与性が強いものほど促進することがわかった。この研究によって、種々の配位様式のカルボジホスホラン錯体を選択的に合成するための指針を得ることができた。
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