研究概要 |
1)配位子の選定と錯体の合成と同定 ビス(ジホスフィン)パラジウム(0)錯体やビス(ジホスフィン)銀(0)錯体,そして(ジホスフィン)(ジイミン)混合配位型銅(1)錯体の合成を行った.前者の錯体については,以前用いていたbiphepなどよりもビアリル部分の回転障壁を大きくしたジホスフィン類(segphosなど)を使用して合成したところ強発光性の錯体を得た。後者についてはジホスフィンとしてはリン原子間のメチレン鎖が2、3、4のものを、ジイミンとしては2,9-ジメチル-1、10-フェナンスロリンやその誘導体を用いた。得られた錯体はX線構造解析、元素分析、NMRで同定を行った。 2)錯体の分光特性の測定と解析得られた錯体については,申請者の研究室での現有の機器を用いて吸収スペクトル,発光スペクトル,時間分解発光スペクトル,発光量子効率などを測定した。なお,これらの錯体の発光に関しては酸素による消光が見られたため,脱気下での測定を行った。biphep誘導体を含むパラジウム(0)錯体や、1,2-ビス(ジフェニルボスフィノ)ベンゼンを含む銀錯体は、溶液中室温で10-30%の範囲の量子効率で発光することが明らかとなった。これらの結果から励起状態に関する基本的な速度パラメータ(放射速度定数や無放射速度定数など)を求め,励起状態の帰属等考察を行った。励起状態の構造変化については,吸収バンドと発光バンドの差であるストークスシフトの大きさや,発光バンドの半値巾を指標として用い,これらの温度変化を利用して励起状態での構造変化を推定した。また,発光寿命曲線も励起状態の構造変化を敏感に反映するため,それについても詳しく測定を行った。なお,予定通り今回の研究費にて新型の窒素レーザを購入した。このレーザは以前から用いていたものに比べて強度が高く、高精度な測定が可能となった。
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