1配位子の選定と錯体の合成と同定本年度は主にビス(ジホスフィン)銀(I)錯体について研究を行った。ジホスフィンとしては、ビス(ジフェニルポスフィノ)エタンdppeや、ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンdppbzを用い、これらが2分子銀(I)に結合した錯体を合成した。得られた錯体は主に元素分析とNMRで同定を行った。 2錯体の分光特性の測定と解析これらの錯体が溶液中で発光することはすでに本研究室で明らかとなっている。本年度は、これらの錯体の溶液中や、ポリマー幕中、加圧下など各種の環境下でどのような発光を示すかについて詳細に検討を加えた。[Ag(dppe)]NO_3、[Ag(dppbz)_2]NO_3いずれも固体では400nm付近に発光を示すのに対し、アルコール溶液中では600nm以上の長波長部に発光を示す。これらの溶液の温度を下げていくと、発光スペクトルはまず長波長シフトを示し、溶媒の融点付近の狭い温度範囲で急激なブルーシフトか起こること、100K以下の温度ではきわめて強い青色発光を示すことが判明した。また、PMMAポリマー膜中では青緑色発光を示した。試料をKBr錠剤中に分散させ、加圧した後に発光を測定したところ、加圧の際の圧力が強い方がより長波長側に発光を観測したが、これについては今後再現性をチェックする必要があると思われる。これらの錯体の励起状態における構造の変化が発光波長の変化に対応していると考えられる。 さらに、ホスフィノキノリンを含む銅錯体についても固体状態の発光について検討を加えた。
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