研究課題
第一遷移系列元素でスピン軌道結合が働く系としてコバルト、マンガン、ニッケル錯体について磁化率の温度依存性を調べた。新規ピリジル誘導体を用いて新規のコバルト三次元多核錯体を合成し、直径4A程度の孔を持つ三次元構造であることをX線結晶解析により明らかにした。磁化率の温度依存性及び磁化の磁場依存性はコバルトの軌道の寄与が大きいことを示すものであった。シッフ塩基のコバルト二核、三核錯体の磁化率の温度依存性も調べ、コバルトの零磁場分裂による磁気挙動を観察した。次にマンガンの系について金属間が3A程度の近い距離にある二核錯体の磁化率の温度依存性を調べた所、磁気的相互作用が強く、零磁場分裂の影響を観測できなかった。一方、マクロ環にシッフ塩基ペンダントを取り付けて金属間を10A程度離した系を新規合成することにより、磁気的に希薄な条件下で零磁場分裂の影響を浮かび上がらせることができた。シッフ塩基ニッケル二核錯体の磁気的性質はスピンのみの相互作用で説明できた。第二遷移系列元素としてはルテニウムについて金属-金属結合を持つ新規多核錯体を合成し、磁化率の温度依存性を調べた。比較的大きな零磁場分裂と強い反強磁性的相互作用が見出された。この系は長鎖アルキル基の導入により液晶的性質も観測された。その他、室温で安定な新規有機ラジカル配位子による新規金属錯体を合成中であり、また大きな磁気異方性が期待できる希土類元素の新規錯体も幾つか合成し、磁気的挙動を調べている。
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