ナノメートルサイズの空間を内部に持つ多孔質材料は吸着、分離、触媒等の機能を持つ。ナノ空間内表面の性質はそれらの機能と密接に関係しており、本研究ではプローブ分子を用いた固体NMR法によりナノ空間内表面の性質を明らかにすることを目的としている。ナノ空間の内表面は空気中の水分に敏感なため、NMR測定は空気中の水分を完全に遮断した状態で行う必要がある。ある種の「in Situ」測定技術が必須である。平成19年度は、NMR測定用試料の調製用器具の整備を行い、試料の調製手順を含めた、「in situ」 NMR測定手順を確立した。 (a)NMR測定用試料の調製:空気中の水分の影響によるプロトンシグナルをなくすために、試料からの水分の除去および雰囲気を制御した空間で試料を調製できるように、器具や手順を整備した。 (b)ローターへの試料の充填方法:不活性ガス雰囲気下で試料をローター(高速回転させるための特殊な試料管)に充填するために、冶具を設計・試作して、細かい作業を行うことを可能にした。 (c)ローターの気密性の確認:測定中に試料が吸湿することがないかを確認するために、ローターの気密性をテストする方法の考案と実施を行い、用いたローターの気密性に問題がないことを確認した。 (d)プローブ分子の選択:酸・塩基点として働くかどうかを調べるためのプローブ分子として、リンを含む化合物を選択し、純品のNMR測定を行い、基礎データを得た。 (e)プロープ分子の導入方法とNMR用試料の調製法:プローブ分子を空気中の水分が混入しない状態で、かつ導入量を精密に制御する調製法を考案した。 (f)NMR測定の条件設定:シグナルを飽和させないでシグナルを積算するための測定条件を決めた。以上により、完全に雰囲気を制御した状態でNMR測定が行えるようになった。
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