研究概要 |
海底面下数百mの深部に音波反射面を与え従来より研究対象とされてきた層序集積(Milkov and Sassen, 2002)のメタンハイドレート(MH)とは生成起源と生成過程が全く異なると考えられる海底面直下にMH濃集帯を作る表層型MHが近年海底からガスが湧出する場所で発見された(松本, 2009 ; 庄子, 2009 ; 南, 2009 ; 八久保, 2009)。これらのMHの違いは生成起源(水分子およびガス分子の起源)とその移動過程がMH集積に密接に関係することを示唆する。本研究では海底表層MH起源を化学的に解析することを目的に以下について研究を実施した。 (1) ロシア国サハリン沖および海底表層型MHとの比較をおこなう目的でロシア国バイカル湖において海底及び湖底表層堆積物中MH賦存に関する物理調査(音波探査等)及び表層型MH含有堆積物コアの採取をおこなった。 (2) 堆積物コア中MHは現場にて連続的にMH解離水を採取した。堆積物間隙水はガス分析用試料採取の後に現地にて採取した。試料は北見工業大学へ液体窒素温度で輸送した。 (3) 間隙水中溶存イオン濃度及び間隙水のδ^<18>OとδDの深度プロファイル、堆積物中含水率等の測定を通じて、イオン分布、海底下深部からのフリーガスフラックス及び気体が飽和した湧水について考察した。 (4) サハリン沖海底表層型MHの化学分析より、海底下深部からの気体状湧昇メタンが堆積鞠中から海水由来の水分子を抽出してMHを生成したことを明らかにした。 (5) サハリン沖海底表層型MH中メタンは二酸化炭素還元経路を経た微生物起源が主であるが、わずかな熱分解起源メタンの混入を否定できない。バイカル湖底表層型MHは泥火山域によっては最大15%程度のエタンを含み熱分解起源を示唆した。 (6) サハリン沖海底の湧出ストラクチャーにはガスのみを湧出するストラクチャーと、湧水を伴ったガスを湧出するストラクチャーが存在することを明らかにした。 今後も調査ストラクチャーを増やして検討することが表層型MH生成機構の解明には重要である。
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