水溶液中の電極表面は、サイクリックボルタンメトリーにおいてはさまざまな反応が起こる場であり、電気化学や触媒化学のみならず、機能材料や生態試料の反応に関するシミュレーションの場としても有用である。水溶液中での電極表面、すなわち固液界面で起こる現象を捉えるために近年ではSTM、 AFM、 SHG、 SFGなどによってin situで測定する方法が多数開発されてきており、固液界面への注目度の高さが伺える。本研究では、水溶液中で起こる物質の変化や電極に対する吸着を、電極電位を規制しながら、XAFS法、および熱レンズ法で吸着量や吸着化学種、およびその吸着構造変化等を観察することを試みた。 まず、水溶液中の表面観察上で重要となる熱レンズによるXAFS測定法を確立するために、臭化亜鉛濃厚水溶液を用いて、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設にて測定を行った。He-Neレーザーの光をプローブ光とし、このプローブ光をX線と同軸で試料に照射し、X線の吸収によって発生した熱を観測してXAFSスペクトルとした。この方法は非常に表面の感度が高く、照射したX線がウィンドウ材に吸収されて大きなバックグランドとなり、良好なスペクトルが得られなかったが、非常に薄いポリプロピレン膜を窓材にすることでXAFSスペクトルを得ることができた。 また、半球レンズにITOやIZOなど、導電性のある透明な膜を平板面に蒸着し、アルゴンレーザー光を半球レンズガラス平面/水溶液界面で全反射するように球面側から入射し、電極表面に存在する物質の熱吸収を観測した。これらの方法は現在、改良開発中である。
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