化学物質の生体への毒性は今まで人間への被害報告で分かったものが多いが、現在動物実験あるいはin-vitro細胞培養実験で研究されるようになった。一方、ある化学物質が細胞に対して強い毒性を示す場合、その化学物質の存在により生存細胞が死滅したりするので、細胞膜近傍を通すプローブ光の偏向信号が大きく変化する。本研究はこの発想に基づいて、プローブ光一本で化学物質の細胞への毒性を判定する方法を開発した。 人工肝臓にもしばしば用いられるHepG2細胞を培養液(10%FBS、DMEM)で培養した。培養した細胞の近傍にプローブ光をあて偏向信号を測定した。まず、紫外可視光のHepG2細胞への殺傷力を検討した。結果として、330nm〜350nmの紫外可視光が細胞へ殺傷力があることが分かった。また、生きている細胞に紫外可視光を連続照射する場合、細胞死滅する前に大きな偏向信号を示すことも分かった。更に、過酸化水素もHepG2細胞へ殺傷力があることも明らかにした。 また、HepG2細胞培養液にグルコースを添加すると、偏向信号が大きくなり、細胞膜内外の物質輸送がより大きくなっており、細胞の活性が高くなっていることを示唆した。一方、培養液に30%のアルコールを添加するとHepG2細胞が即死となり、10%のアルコールを添加しても細胞の生存率が大きく減少したことが分かった。 更に、細胞膜輸送物質の同定と定量を目指すキャピラリー電気泳動分析、細胞内蛋白質の定量を目指す等電点電気泳動実験も行い、微量蛋白質を測定できるキャピラリー電気泳動法も開発した。また、光照射により発生した活性酸素の化学発光測定法も検討した。
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