研究課題/領域番号 |
19550085
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
石田 康行 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (70273266)
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研究分担者 |
大谷 肇 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (50176921)
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キーワード | 水熱プロセス / 超臨界・亜臨界水 / ポリエチレンテレフタレート / 水熱分解 / エステル結合 / メチル化試薬 / ガスクロマトグラフィー / 高速液体クロマトグラフィー |
研究概要 |
最初に、高分子材料の予備分解や誘導体化反応などの前処理に適した、バッチ型水熱反応システムを試作した。本システムでは、反応管の一端を圧力計に直結することにより、水熱反応時の圧力を常時観測できるようにした。このシステムの使用により、各種高分子試料の水熱反応を、最高温度450℃および最大圧35MPaの条件下まで圧力を観測しながら実施できるようになった。 次に、試作した反応システムを用いて、実際の高分子試料の水熱分解実験を行った。ここでは、架橋高分子の分析のための基礎検討として、分子内にエステル結合を有するポリエチレンテレフタレート(PET)を選択し、水熱条件下での当該結合の開裂に注目して、その分解挙動を追跡した。PET試料と水の入った反応管を250-300℃の温度下で30分加熱して水熱実験を実施した。その後、生じた分解物を高速液体クロマトグラフィー測定に供した。 まず、250℃での分解物試料のクロマトグラム上には、PETのモノマー単位であるテレフタル酸に加えて、一連のオリゴマーに由来するピークも明瞭に認められた。さらに、テレフタル酸のピーク強度からその回収率を算出したところ、48.9%という値が得られ、当該温度下ではエステル結合の選択的分解は十分に進行しないことが示唆された。これに対して、300℃において水熱分解した試料のクロマトグラムでは、オリゴマー類のピークは一切認められず、テレフタル酸のピークのみがかなり強い強度で観測された。当該ピーク強度からテレフタル酸の回収率を算出したところ、70.4%という比較的高い値が得られた。これらの結果から、300℃下での水熱プロセスでは、PET中のエステル結合が選択的に開裂し、モノマー成分であるテレフタル酸へと高効率に分解反応が進行することが分かった。従って、エステル結合を含有する架橋ポリマーに水熱プロセスを応用すれば、当該結合のみを選択的に開裂するといった、分析用の試料分解処理が容易に行えることが期待できる。
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