当初の研究計画に沿って、今年度は以下の項目について研究した。 1. 他の誘導体化反応との比較 分析対象とする化合物を効率良く誘導体化し、感度や定量性の向上を達成するべく、DNPH以外の各種の誘導体化試薬、それらと分析対象物質との適合性、ならびにその誘導体化反応条件等について、以下の反応系自体の最適化とともに総合的に検討した。 2. 細繊維表面自体の化学修飾による高性能化の検討 担体として用いる合成細繊維の表面を化学的修飾することにより、表面改質を行った。本研究の結果、繊維表面改質に成功するとともに、明らかに表面状態が変化していることを確認している。これにより、液相の選択範囲が大幅に広がり、分析対象とする化合物に適した種々の誘導体化反応場を、細繊維表面の液相内に効率良く構築することが可能であることも確認した。 3. 本研究の応用 本研究では、室内環境中の各種揮発性有機化合物の微量分析に有効な、新規試料捕集・前処理デバイスを開発することを主たる目的としていることから、応用例として行う実試料の分析による性能評価・試料保存性評価のみならず、操作性の評価も極めて重要な課題として取り組んだ。 特に、特別な知識を必要としない試料採取を可能とする点については、重点的に取り組み、また、その実用性について、一層の向上を図った。更に、室内環境測定の汎用手法としての有効性についても確認し、更に、他の分離分析手法への応用についても、その可能性を立証した。
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