1.目的界面活性剤は、合成洗剤などの身近な生活消耗品に多く含まれており、水環境に与える影響は非常に大きく環境汚染物質として注目されている。この界面活性剤による環境汚染は人類の将来を脅かすほど深刻な社会問題となっている。このような界面活性剤による環境汚染状況を広範囲にわたって正確に把握するためには、簡便で高感度な化学計測システムの開発が不可欠である。そこで、本研究では、マイクロチップとコーテッドワイヤ型イオンセンサの利点に着目し、既に研究代表者らが確立した金属ワイヤーとプラスチックポリマーを用いるマイクロチップの作製法を用いて、界面活性剤を検出するためのコーテッドワイヤ型イオンセンサを組み込んだマイクロチップを開発することを目的としている。 2.得られた結果陰イオン性界面活性剤検出用イオンセンサは、溶媒抽出法により調製した臭化テトラヘキサデシルアンモニウム(THAB^+)とドデシルベンゼンスルホン酸イオン(DBS^-)とのイオン対の2-ニトロフェニルオクチルエーテル溶液及びポリ塩化ビニルを、テトラヒドロフラン(THF)に完全に溶解させ、そのTHF溶液を銀線の先端にディップコートすることによって作製した。このDBS^-センサのDBS^-イオンに対する電位応答を銀-塩化銀線を参照電極として測定したところ、1x10^<-6>M〜1x10^<-4>MのDBS^-イオンに対して60.0±0.4mV/decadeのネルンスト応答を示した。次に、DBS^-センサを組み込んだマイクロチップの開発を行った。マイクロチップの流路は、ポリスチレン板にワイヤーを載せ、二枚のスライドガラス、クリップで挟み、115℃で40分加熱して作製した。この流路を転写したポリスチレン板を、もう1枚のポリスチレン板と合わせ、100℃で1時間加熱し、2枚のポリスチレン板を融着した。次に、溶液注入・排出用のシリコンチューブを流路にエポキシ樹脂で固定した。最後に、このポリスチレン板にDBS^-センサと参照電極としての銀-塩化銀線を組み込みエポキシ樹脂で固定することによって、マイクロチップを作製した。1x10^<-2>MLiCl溶液と種々の濃度のDBS^-溶液の混合溶液を流速50μL/minでマイクロチップに送液し、マイクロチップのDBS^-イオンに対する電位応答性を評価した。マイクロチップ系におけるDBS^-センサは、1x10^<-6>M〜1x10^<-4>Mの濃度範囲のDBS^-イオンに対して60.1±1.5mV/decadeの電位応答を示し、バッチ系の応答とほぼ同じ感度が得られた。また、マイクロチップ系の測定においても、バッチ系での測定とほぼ同程度の検出下限濃度が得られ、測定開始から2分程度で安定した電位が得られた。
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