研究課題
特徴的な蛍光を示すユウロピウム(III)(Eu(III))の錯体分子の中に他の金属を導入することによってその特性を増幅させる、また、この2核錯体をβ-ジケトンとシッフ塩基による協同抽出を利用して調製したい、この2つの目的を持って本研究は進められた。本年度の主な成果を次に要約する。1) Zn(II)、Cu(II)、Pd(II)とEu(III)を含む2核錯体の蛍光特性:トリス(ピバロイルトリフルオロアセトナト)Eu(III)とビス(サリチリデン)トリメチレンジアミン(H_2(saltn))とそのZn(II)、Cu(II)もしくはPd(II)錯体を合成し、それらのCHCl_3溶液を調製した。Eu(pta)_3溶液とM(II)を導入したシッフ塩基を種々のモル比で混合して、蛍光スペクトルを測定した。Zn(II)の入った場合だけ、顕著なEu(III)の蛍光の増感が現れた。Eu(pta)_3とZn(II)シッフ塩基錯体が作る錯体の安定度定数、またこの複核錯体を合成してX線解析をして、Zn(II)が5配位を取ることが増感作用に寄与していることを示した。2)Zn(saltn)の溶解度の改善とEu(III)の抽出に与える効果:CHCl_3への溶解度とEu(III)の蛍光に対して増感作用の大きいシッフ塩基を見つけるためブチル基の導入、トリメチレン基のフェニル基、シクロヘキシル基、メチルエチル基、ブチル基による置換を試みた。溶解度を高め、増感効果の大きいシッフ塩基として、ビス(サリチリデン)シクロヘキシルジアミン(H_2salchn)が有望であることを見つけた。3)Zn(II)を含む塩基錯体は水と接するとZn(II)が脱離するので、抽出剤として使うことはできなかった。最後にEu(III)とZn(II)を入れた水相とHptaとH_2salchnを含むCHCl_3をはげしく振り混ぜることによって抽出種として複核錯体を調整することに成功した。
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