研究概要 |
固相分光法は吸着材に濃縮されたアナライトを溶出することなく、直接測定することから、溶出によるアナライトの希釈がなく高感度の定量が実現できる利点を有している。しかし、問題点も多く、吸着材による吸収散乱が大きく、高い空試験値が蛍光分析の検出限界を悪化させる原因になってきた。この問題の解決に、低屈折率の吸着材を採用し、改善を試みたが、新たの問題として、吸着材の形状、大きさの再現性に対する困難さが明らかになった。テフロンAF-1600の充填密度変化により、流速が変化し、励起光の透過性は絶えず変化した。何度かフローセルに充填を繰り返し、最良のものを選び、それを使用する方法で、検量線を作成(励起波長225nm,蛍光波長305nm)、環境試料中のポリオキシ(2)ノニルフェニルエーテルの蛍光定量を行った。その結果、流量2.5mLとし、5分間濃縮で検出限界1.8ppb(定量下限5.4ppb)、30分間濃縮で検出限界は0.7ppbが得られた。試料溶液pHの影響はほとんど見られなかったので、特にpH調整をせず、そのまま使用した。検量線の相関係数は0〜50ppbの範囲で0.995であった。 吸着材の調製が蛍光分析においては問題であったので、これを改善するために、吸光法により、 PTFE-MFを用いる固相分光法を検討した。アナライトは陰イオン界面活性剤(SDS)とし、 SDSの対イオンにはCo(III)-5Cl-PADAPを用いた。試料溶液を10分間,流量1.0mL/minで流し,吸光度(560nm)を測定し、検量線を作成したところ、0〜100ppbで相関係数0.991の結果が得られた。検出限界は1.3ppbであった。測定後メタノールで2分間洗浄することにより、再測定が可能となり、1時間の測定回数は5回であった。
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