本研究では、血液や細胞抽出液などに含まれる微量タンパク質を高感度に検出することを目的とする。そのためのフォーマットとして、多様な薄膜が積層化された基板を作製する。具体的には、まず基板上にプラズマ重合法やスパッタなどを駆使することによって、金属膜、誘電体膜などの積層構造を構築する。特にプラズマ重合法では、ナノレベルでコントロールされた膜厚の構築が期待される。それらの基板上でCy3などの蛍光色素で標識されたタンパク質(標識抗原、標識二次抗体など)の高感度検出を試みる。平成19年度では、スライドガラス上にプラズマ重合膜を有するナノ構造基板を構築し、この上で蛍光シグナルの増強が観察されるかどうかを評価することにした。 まず基板上に最初に製膜させる金属として銀を使用し、スパッタリング装置でスライドガラス上に銀薄膜を作製した。次にその金属膜の上にさらに積層させる機能性薄膜として、ヘキサメチルジシロキサンをモノマーとしたプラズマ重合膜を作製した。 金属膜とヘキサメチルジシロキサン膜の膜厚を、触針型表面形状解析装置またはエリプソメーターを用いて測定し検量線を作成した。その結果、製膜時間と膜厚は比例関係にあることが示された。次に、さまざまな膜厚のプラズマ重合膜を持つ種々のナノ構造基板上にCy3標識抗体をスポッティングし、その蛍光シグナルを測定した。その結果、プラズマ重合膜の膜厚を適切に制御することにより蛍光シグナルを12〜23倍に増強できることが確認された。
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