研究概要 |
本研究の目的は,チアカリックス[4]アレーンの水酸基結合部位に性質の異なる2種類の配位性官能基を導入した多官能性ハイブリッド型チアカリックスアレーン類を創製するための新規合成法を確立し,また,合成した新規ホスト分子の機能を開発することであり,本年度は下記の成果を得た。 1.チアカリックス[4]アレーンの1,3-ビス(トリフルオロメタンスルホン酸エステル)に対するベンジルアミンのUllmann型反応を鍵として,モノアミノチアカリックス[4]アレーンを合成する方法を確立した。目的化合物のチアカリックス[4]アレーンからの全収率は33%であるが,この収率は従来法(0.9%)に比べてはるかに高く,初めての実用的合成法といえる。 2.1の検討の過程で,基質として用いた1,3-ジエステル体が分子内転移により1,2-ジエステル体に異性化することを見出した。異性化条件の最適化により,従来合成が困難であった1,2-ジエステル体を定量的に合成することができるようになった。また,1,2-ジエステル体のエステル基を保護基として3,4-位をエーテル化し,エステル基を除去することにより,分子不斉を有するチアカリックス[4]アレーンのanti-1,2-ジエーテル体を初めて選択的に合成する方法を確立した。 3.1で合成したモノアミノチアカリックス[4]アレーンを芳香族ジアルデヒドでイミノ化し,続いてイミノ基を還元することにより,2つカリックスアレーンユニットをアミノ基を足がかりとして結合したビスチアカリックス[4]アレーン類を合成する方法を確立した。
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