研究概要 |
Soderquistらが開発したアセチルシランの合成法を利用し、ケイ素原子上にパーフルオロアルキル基を持つアシルシランの合成を検討した結果、効率よく目的化合物を得られることを見出した。得られたアシルシランの物性を測定したところ、ケイ素原子上に3つのパーフルオロアルキル基が存在する場合に、フルオラス溶媒を用いた抽出分離が可能であることが明らかとなった。 一方、アシルシランの合成的利用を検討する目的で、アシルシランをカルボニル化合物として用いた種々の反応を行った。アシルシランとアルデヒドとの塩基存在下での反応では、通常のアルドール反応に止まらずTishchenko反応が進行して1,3-ジオールのモノエステルが生成した。この反応では用いるアシルシランおよびアルデヒドの置換基によってジアステレオマーの作り分けが可能であることを見出し、その立体選択性はシリル基のかさ高さに起因していることが明らかとなった。また、ルイス酸存在下アシルシランとクロチルシランの細見-桜井反応では対応するシリルホモアリルアルコールが立体選択的に生成した。この反応の立体選択性もアシルシランのシリル基の存在によるものである。さらに得られたホモアリルアルコールのシリル基は容易にプロトンに変換可能であり、結果として通常のカルボニル化合物とクロチルシラン細見-桜井反応で得られるホモアリルアルコールとは逆の立体配置を持つ化合物を選択的に得ることができることが明らかとなった 以上に述べたようにアシルシランに含まれるシリル基は、種々の反応において立体選択性を制御するDirecting groupとして働くだけでなく、その脱離能を活かして他の官能基に変換可能である。さらにフルオラス基を導入することによりフルオラスタグとしても利用可能であることから、我々の手法はクリーンな合成化学にも応用でき、さらなる発展が期待できる。
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