医薬品であるベフロキサトンやエナラプリルの鍵中間体であるトリフルオロメチル基やトリクロロメチルを有する第二級や第三級アルドール化合物をジアステレオマー法に類似した作用原理に基づき、低コスト・低環境負荷・省エネルギーラセミ分割するアンカー分子の構造最適化、ならびに光学分割の基礎条件(溶媒、温度、時間など)のデータ収集を実施した。その結果、第二級トリフルオロメチル基を有するアルドール化合物は、99%以上の光学純度で分割できた。トリクロロメチルを有するアルドール化合物に関しては、アンカー分子のトリフルオロメチル基をクロロジフルオロメチル基に変換、すなわち、高い電子求引性を保ちつつ、かさ高くすることにより、その性能を高めることができた。アンカー分子の他の構造に関しては、以下のことが明らかになった。すなわち、レトロアルドール反応によるラセミ化防止のための水酸基の保護基は、テトラヒドロピラニル基が最適であった。また、高分子重合用スチレン部位の導入には成功したが、そのアンカー分子の光学純度は、不十分であった。今後、このスチレン部位を有するアンカーモノマー分子の光学純度を向上させるため、合成方法ならびに精製方法を精査する予定。最後に、ベンゼン環状のフッ素原子の高い反応性を活用し、市販の樹脂の酸素求核部位との反応によるアンカー分子の高分子への固定化を行った。しかしながら、反応は進行せず、原料アンカー分子が定量的に回収された。
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