研究課題/領域番号 |
19550106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 良平 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40115960)
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研究分担者 |
藤田 健一 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80293843)
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キーワード | イリジウム / 水素移動反応 / 高原子効率的合成 / 無溶媒合成 / アンモニウム塩 / アミン / アルコール / 含窒素複素環 |
研究概要 |
本研究者は従来ほとんど研究の行われていなかった有機イリジウム錯体の触媒機能に注目し、Cp^*配位子を有するイリジウム錯体が有機分子間の水素移動反応において極めて高い触媒活性を示すことを見出してきた。本研究課題では、この触媒的水素移動反応を基盤として有用な有機合成触媒系に発展させることを目的として、アンモニウム塩を窒素源とするアルコールからのアミン類の低環境負荷型合成反応の開発に取り組み、以下の成果を得た。 最初にアンモニウム塩として酢酸アンモニウムを用い、各種第一級アルコールとの触媒反応について検討した。触媒として[Cp^*IrCl_2]_2を用い、触媒量の塩基の存在下で反応を行うことによりトリアルキル化反応が進行し、第三級アミンが高収率で独占的に得られた。 一方、アンモニウム塩としてテトラフルオロホウ酸アンモニウムを用いて各種第一級アルコールとの反応を同様の条件で行うとジアルキル化反応が選択的に進行し、第二級アミンが高選択的かつ良好な収率で得られた。また、テトラフルオロホウ酸アンモニウムと各種第二級アルコールとの反応では、第二級アミンのみを高収率で得ることができた。 さらに、テトラフルオロホウ酸アンモニウムとジオール類との反応を検討し、分子間と分子内アルキル化反応を経てピペリジンおよびピロリジン誘導体等の含窒素複素環が得られることを明らかにした。 上記一連の反応は、イリジウム錯体が触媒する水素移動が鍵過程となるN-アルキル化反応を経て進行するものであり、イリジウム錯体触媒の有機合成反応における有用性を示している。また本研究は、安価で取り扱いの容易なアンモニウム塩と有害性の低いアルコール類を原料とする触媒的なアミン類の合成反応として新規性が高いことに加え、、無溶媒条件で高原子効率的に進行する低環境負荷型触媒反応であることも大きな特長である。
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