研究概要 |
多重刺激応答機能と特異な高次構造及びその転移機能を併せ持つアミノ酸系高分子材料の創製を目的として、キラリティー(L体, D体)や親水性(Phe : フェニルアラニン、Ala : アラニン)の異なるブロック共重合体の合成を試みた。その結果、RAFT重合法を用いることで親水性一疎水性(親水性)やキラルーキラル(アキラル)の組み合わせから成るアミノ酸系ブロック共重合体の精密合成に成功した。さらに共重合体の化学構造、高次構造、刺激応答機能、キラリティーの相関について明らかにした コラーゲンの重要な構成単位であるプロリン誘導体(プロリン : Pro、ヒドロキシプロリン : Hyp)に着目し、プロリン成分のみから構成される多重刺激応答性ブロック共重合性の創製にも成功した。具体的には、プロリンのカルボン酸部位を保護した構造を有し、水溶液中で下限臨界溶液温度(LCST)を示すPoly(A-Pro-OMe)を温度応答性セグメントに選択し、高分子弱電解質であるPoly(A-Pro-OH)をpH応答性セグメントとして組み合わせることで、pHと温度に応答するブロック共重合体を構築した。さらに、温度応答性のPoly(A-Pro-OMe)と水溶性のPoly(A-Hyp-OH)とから成るブロック共重合体が20℃付近でLCST、40℃付近で上限臨界溶液温度(UCST)を示す2重温度応答性を有し、且つ各セグメントの鎖長、組成、塩の添加等により多重刺激答機能を制御できることも見出した。また、特異な電子・光機能を有するカルバゾール含有アミノ酸系ブロック共重合体の構築にも成功した。 以上のように、特異な機能を有するアミノ酸を精密に合成された高分子鎖中にブロック的に配列させることで、多重刺激応答性及びその高次構造の動的変換を実現した。これらの成果により、究極の生体高分子であるタンパク質に一段階近づくことに成功した。
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