研究概要 |
超臨界二酸化炭素は不燃,無毒,安価であることから,揮発性の有機溶剤に代わる新規な環境適応型媒体として注目を集めている。超臨界二酸化炭素には多くのポリマーが不溶であることから,これまで一般に沈殿・分散重合の媒体として広ぐ研究対象にされてきた。本研究では,超臨界二酸化炭素中における,ニトロキシドをControl Agentとして用いたスチレンの制御/リビングラジカル沈殿重合を行った。その際,ニトロキシドとしてN-tert-butyl-N-[1-diethylphosphono-(2,2-dimethylpropyl)]nitroxide(SG1)及び2,2,5-tri-methyl-4-phenyl-3.azahexane-3-nitroxide(TIPNO)を用いた。その結果,超臨界二酸化炭素媒体中において,ポリマー粒子と媒体間におけるニトロキシドの分配が重合制御に悪影響を及ぼし,その影響が(1)モノマー濃度が低い場合(2)TIPNOを用いた場合において際立つ事を明らかにした。さらに,いずれのニトロキシドを用いた場合も,系内のモノマー濃度を上昇させることでニトロキシドの媒体への分配を抑制し,均一系である溶液重合と比較して良好な重合制御が得られることを明らかにした。この現象は,我々の知る限り,不均一系での制御/リビングラジカル重合が均一系より優れていることを示した最初の例であり,ラジカル重合の制御を向上させる上で超臨界二酸化炭素が有用であることを示している。以上の結果は,制御/リビングラジカル重合の最適化だけでなく,不均一系での制御/リビングラジカル重合が工業化においても有用であることを示す重要な知見を得ることができた。
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