研究概要 |
アミロースはグルコースがα(1→4)-グリコシド結合でつながった多糖であり、その糖鎖はらせん構造を形成している。このらせん内部は疎水場であるために、様々な疎水性低分子量化合物を包接することが知られている。すでに研究代表者は、"つる巻き重合"という高分子間で包接錯体を得る手法を用いて、アミロースとポリエーテルやポリエステルからなる包接錯体の合成を報告している。本研究では、つる巻き重合におけるわずかな包接能の違いを利用して、構造が似通った2種類のポリマー混合物存在下、つる巻き重合を行うことで選択的に1種類のポリマーのみをアミロース内部に包接できることを見出した。 今回、構造が似通ったゲストポリマー混合物としてポリエーテル混合物(ポリテトラヒドロフラン(PTHF),ポリオキセタン(POXT))を用いた。選択的包接のためのつる巻き重合は、これらのポリマー混合物を酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.2、02mol/L)中に超音波洗浄器を用いて分散させ、この分散液中にプライマーであるマルトヘプタオース、モノマーであるグルコース1-リン酸ナトリウム塩(G-1-P)、触媒であるホスホリラーゼを加え40-45℃で激しく撹拌することにより行った。反応終了後、未反応のG-1-Pおよび包接されていないポリマーを取り除くために水とアセトンで洗浄した。得られた生成物の1H NMRスペクトルでは、POXTのピークはほとんど観測されなかった(PTHF:POXT=100:8)。これは、つる巻き重合によってPTHFのみがアミロース内部へ選択的に包接されたことを示している。
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