研究概要 |
近年、電子部品材料の高集積化が次世代産業の必須要件として認識され、その軽薄短小化はナノレベルすなわち分子サイズレベルに及ぼうとしている。しかし、常温・常圧環境下での電解重合により得られる高分子薄膜は、一般にマイクロレベルでの緻密さ・平坦さに留まっており、ナノレベルでの高度集積化には未だ多くの問題点を抱えている現状にある。本研究では、物質拡散が常温・常圧環境下よりも1000倍程度大きい超臨界環境下において、チオフェン誘導体等の電解酸化重合を系統的に行い、ナノレベルで緻密かつ平坦な高分子薄膜を精密合成し、これらの薄膜物性を詳細に評価した。具体的には、1.超臨界二酸化炭素環境下におけるチオフェン類、ピロール類、アニリン類等の電解酸化重合を独自に工夫した反応装置を用いて実施した。これらの知見を基に、チエニル基で置換されたポルフィリンの電解酸化重合を行い、この高分子薄膜を得、作製のための基礎的要件を把握した。さらに、系統的な検討のため、関連する単量体であるピロール基を有する5,15-ジエチル-10,20-ジ(3-ピロール)ポルフィリン等も新規に合成した。2.1.で合成されたポルフィリンを活性部位として含有する高分子薄膜の物性評価を各種物理化学的方法より実施した。特に、各種顕微鏡観察からの表面粗さの指標である平均二乗粗さは常温・常圧環境下での電解重合によるものに比べて1オーダー低下し、数10nm程度の粒子が密に詰まった平滑な高分子薄膜であった。さらに、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系からの活性酸素の電気化学的応答を本高分子薄膜を修飾した電極より見出し、本高分子薄膜中に有効な活性部位の存在を確認した。
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