研究概要 |
近年、電子部品材料の高集積化が次世代産業の必須要件として認識され、その軽薄短小化はナノレベルに及ぼうとしている。しかし、常温・常圧環境下での電解重合による高分子薄膜は一般にマイクロレベルでの緻密さ・平坦さに留まり、ナノレベルでの高度集積化には未だ多くの問題点を抱えている。本研究では、物質拡散が常温・常圧環境下よりも1000倍程度大きい超臨界環境下において、チオフェン誘導体等の電解酸化重合を系統的に実施し、ナノレベルで緻密かつ平坦な高分子薄膜を精密合成することを目的とした。具体的には、1.コバルト[5-モノチエニル-10,15,20-トリエチルポルフィリン](1)、コバルト[5-モノチエニル-10,15,20-トリピリジルポルフィリン](2)等を合成し、超臨界二酸化炭素流体を用いた1等の電解酸化重合を行い、緻密かつ平坦な高分子薄膜をカーボン基板上に得た。2.上記1.で得られた高分子薄膜を修飾したカーボン電極における酸素還元触媒活性は、常温・常圧の有機溶媒中で電解重合したものに比べて高い活性を示した。3.この高分子薄膜を用いた膜電極接合体(MEA)の作製を各種作製プロセスにおいて検討した。さらに、超臨界二酸化炭素流体中にカーボン粒子を分散させ、1等の超臨界二酸化炭素流体中での流動床電解酸化重合を行い、高分子薄膜を修飾・担持したカーボン粒子を調製し、さらに熱処理を施した。この粒子の修飾電極において酸素還元触媒活性が得られた。4.以上を踏まえ総括すると、超臨界二酸化炭素流体中において緻密かつ平坦な高分子薄膜が作製でき、この系において酸素還元触媒活性が得られた。この系でのMEAの作製、評価等には多くの検討すべき課題はあるものの、超臨界二酸化炭素流体中での電解重合による高分子薄膜合成、その燃料電池用カソード触媒等の研究に関して、多くの知見が集積できた。
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