研究概要 |
本研究代表者はp/n型有機二重層フィルムが広範な可視光に応答する光機能界面となることをこれまでに見いだしており, それを踏まえて, 本年度は高効率固/液界面の創出に向けての研究を中心に行った. ペリレン誘導体(PTCBI, n型半導体)/無金属フタロシアニン(H_2Pc, p型半導体)系フィルムを電極化し, それを水中で光電極として用いると, H_2Pc/水界面で酸化反応が起こる. 蒸着フィルム作製時に加温条件を採用することにより, 室温条件で作製したものに比べて酸化反応速度が向上することが昨年度の研究から明らかとなっている. 詳細にフィルム作製方法や条件を検討したところ, 上述の加温条件下でフィルム作製後, (1) 室温条件下でH_2Pcをさらに積層したり, (2) H_2Pc表面に金粒子を担持する方法で飛躍的に酸化反応速度が向上し, 従来の室温条件で作製したものに比べて, 約5〜10倍程度となることが明らかとなった. 加温条件下でフィルムを作製すると, 多孔性を有するフィルムとなるために脆さが見られたが, (1) の方法により脆弱性を解消・補強でき, (2) の方法により金粒子がホールトラップサイトとして働くため, 活性の向上に寄与したものと考察された. PTCBI/H_2Pc系は, 一般に固/液界面における電荷授受過程が律速段階であるが, PTCBI/H_2Pcを担持する基板の種類やpH条件を変更しても, 大きさも含めて動的特性に影響がないことも明らかとなった. 光エネルギー変換系では, 太陽光エネルギーのより効率的な利用を図る観点から, 利用波長域の長波長化に関する検討が活発に行われており, PTCBI/H_2Pc系を含めてp/n型の有機二重層フィルムは必要条件を備えている有望な材料である. p/n型有機二重層フィルムが光化学変換系にも適用出来る手がかりも得られており, 基礎的な知見を蓄積しながら, 水の分解システムの創出に向けて検討を重ねでいく予定である.
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