本年度は、提案者独自の技法である再沈法を用いて、単一種または複数種のポルフィリン化合物等により構成されるナノ結晶やナノ複合体を創製することを目的とした。具体的には、エネルギー移動のドナーとアクセプターに使用するポルフィリン誘導体を選定した後、再沈法または再沈法を改良した手法により、A:単一種のポルフィリン化合物で構成されるナノ結晶、B:アクセプターとなるナノ結晶の表面にドナーとなる色素を付着させたナノ複合体、C:複数種の化合物で構成されるナノ混晶という3種のポルフィリンナノ結晶を作製することを試みた。 その結果、Aに関しては、サイズが50から400nmに制御されたポルフィリンナノ結晶を得ることに成功した。また、Cに関しても、ドナー/アクセプターとなる複数種のポルフィリン化合物を量比制御しつつ良溶媒に溶解させた後、同溶液を水に注入するという再沈法により、ドナーである無置換ポルフィリンとアクセプターである亜鉛ポルフィリンで構成されるナノ混晶を作製することができた。Bに関しては、中心構造となるナノ結晶の分散液を先ず作製し、その後同分散液に対して、量比制御を行いつつ別種の化合物の溶液を再沈澱することで、シェルーコア2重構造を得る予定であったが、コアとなるべきナノ結晶を後から注入した化合物が認識できず、各々のナノ結晶が生成し、単なる異種ナノ結晶の混合分散液が得られるという残念な結果に終わった。現在、光学特性におけるサイズ依存性や構造依存性を明らかにすることやドナー/アクセプターとなる異種のポルフィリンナノ結晶同士におけるエネルギー変換を蛍光寿命等の評価により行うという目標に向けて、作製されたサンプルAやCの水分散液や薄膜状態における光吸収や蛍光特性等の光学特性評価を行っている。
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