タンデムクライゼン転位を利用して、複数のアミド基、フニノール性水酸基、カテコール部位等を有する大環状化合物、非環状化合物を合成し、ボロン錯体の構築、アニオン認識能などの検討を行った。 複数のフェノール性水酸基を持つ大環状および非環状化合物の合成をタンデムクライゼン転位により合成し、ボロンを含む化合物の合成を収率よく行なうことができた。アミドクラウノファン類のボロン錯体は450〜500nm近辺に蛍光発光性を有することを見出したので、この化合物の環状構造、環員数などによりその性質がどのように変化するかを明らかにした。また、非環状化合物に関しては両末端基に種々の官能基の導入を行い、ボロン錯体の蛍光挙動の変化を検討した。その結果、官能基により、特に芳香環を有する置換基を導入することでイオン強度が増大することを見出した。ボロン錯体のイオン認識能についての検討も行い、リチウムイオンの存在により、蛍光強度が著しい影響を受けることがわかり、センサー用物質として有望であることを見出した。 さらに、前年度合成した複数のフェノール性水酸基を有する3脚型配位子について、イオン認識能を検討し、アニオンに対して選択的な捕捉能を示すことが明らかとなり、その成果を投稿中である。3脚型配位子については、さらに反応を進め、タンデムクライゼン転位により、多数の水酸基を有する3次元構造体などへの合成展開を行っているところである。
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