アミド基及びフェノール性水酸基、カテコール部位等を有する大環状化合物、非環状化合物をタンデムクライゼン転位(TCRと略)により収率よく合成することができた。得られた大環状化合物(アミドクラウノファン)はリン酸二水素イオンやフッ素イオンに対して蛍光発光を示す超分子錯体を生成した。 また、TCR後の非環状ジアミド化合物やアミドクラウノファンが水素化ボロンナトリウムとの反応で定量的にボロン錯体を生成することを見出した。これらのボロン錯体は400-500nm近辺で強い蛍光発光を示すことなどを明らかにした。特に、大環状ボロン錯体はその環の大きさに依存して、アルカリ金属イオンの中でリチウムイオンを添加したとき蛍光強度を増大することを見出した。 一方、非環状型のトリポダンド(三脚型配位子)を合成し、TCRにより複数の水酸基を有する化合物の合成を行った。これらはTi(IV)金属イオンに対して1:1の錯形成を行い、クリプタンド型の新規な金属錯体の合成を行うことができた。さらに、超分子錯体の空孔内に金属イオンやアンモニウムイオンを選択的に包接することを見出した。また、TCR後のトリポダンド型化合物はアニオンを包接することも明らかにした。 非環状分子中に複数のタンデムクライゼン転位を行う部位を導入し、カテコール部位を発生させた化合物を合成した。カテコール部位を有する非環状化合物はTi(IV)と選択的に反応し、3:1の超分子錯体を形成することをX線構造解析、核磁気共鳴などにより明らかにした。
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