TTF四角酸イソプロピルエステル(TTFsq^iPr)およびそのトリメチル置換体(Me_3TTFsq^iPr)のGaCL_4^-塩の結晶構造を検討した。(TTFsq^iPr)GaCl_4においては結晶中でドナー分子のスタック構造は認められないものの、ドナー分子間に近接したS…O接触が、アニオン間にはCl…Cl接触がそれぞれ認められ、ドナー・アニオン間にも顕著に近いS…Cl接触が存在する。1:1の組成比をもつことからこの塩の電導性は低いと考えられるが、非磁性GaCl_4^-イオンを同一イオン半径の磁性イオンFeCl_4^-に置き換えることでフェリ磁性的相互作用の発現が期待される。この結晶はキラルな空間群をとっているが、結晶全体では分極した分子が持つ電気双極子モーメントは打ち消しあうだめ、誘電的性質を示すには至らないと思われる。一方(Me_3TTFsq^iPr)GaCl_4ではドナー分子カチオンラジカルが中性分子と同様に1次元的にhead-to-tailに積層したカラム構造を形成し、GaCl_4イオンがS…Cl接触によりこれらのカラム間を架橋した構造をとっている。組成比からはこのドナー分子は+1価をとるため、1次元的Mott絶縁体鎖を形成すると考えられるが、架橋対イオンを磁性イオンFeCl_4^-に置換していくことで電子的・磁気的性質がどのように変化するか興味がもたれ、現在結晶作成を検討中である。
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