電導性、磁性、光特性を複合的に兼ね備えた物質群は、スイッチ、メモリー、演算素子、表示材料などさまざまな分野で活躍すると考えられる。分子性物質が、その多様性、加工性、軽量性、柔軟性など従前の無機物質にない特性をもつことから、分子性磁性材料開発においては従来の無機材料とは異なる方向性を目指すべきである。本研究では具体的にはハイブリッド分子性磁性体を中心に複合機能の開発を進めた。 1.機能性低次元磁石:ラジカルーコバルト系単一次元鎖磁石からバルクの磁性との共存の見られる系が見つかり、これまでの世界最高の保磁力をさらに更新する程度の「硬い」磁性材料を開発した。また、既に[Co(hfac)_2(BPNN)]では行なわれていたが、今回新たに、[Co(hfac)_2(HNN)]のμSR(ミュオンスピン回転・緩和)を測定し、低次元構造を有するにもかかわらず長距離秩序状態を示すことを明らかにした。 2.分子包接誘起磁性体、磁気検出型イオンセンサー:天然のアミノ酸にラジカル置換基を導入して、金属イオンとのキレート形成能を評価した。また、人工的なラジカル置換のホスト・配位子分子を構築した。ビラジカルの磁性を超分子化学手法により制御した。 3.液晶性磁石・可溶化磁石:長鎖アルキル基を有する鉄(II)錯体を合成し、これらが中間相転移を有するスピンクロスオーバー転移物質であることを明らかにした。類似の系から、光誘起励起スピン状態捕捉を示す系も開発した。
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