金や白金などの貴金属薄膜は電極材料として長年使用されてきたが、更に大きな潜在的な機能を有している。電極としての貴金属薄膜の機能を高めるために要求される三つの要素である、電子伝導性、光透過性、基板との密着性を高レベルで実現するための金属/高分子ハイブリッド材料を開発するために、予備的検討で使用していたスパッタ金薄膜を単結晶である蒸着Au(111)に置き換えることを目的に、前年度までにターボ分子ポンプ及び600℃まで昇温が可能な基板加熱ユニットを装備した真空蒸着装置を導入し、種々の条件下での真空蒸着による金薄膜形成を行い、チャンバーのベーキング時間と基板温度および加熱時間の最適化を図ることで、蒸着条件を検討してきた。蒸着薄膜に電気化学計測および走査型トンネル顕微鏡を用いて、(111)配向性とおよそ金原子1個分のステップおよび数100nmに渡るテラス構造をとる最小膜厚の確認のため、蒸着用真空チャンバーに水晶振動子製膜コントローラーを装着し、蒸着膜膜厚の最適化を行ったところ配向性維持には少なくとも50nm程度の膜厚が必要であることが判明した。それらを踏まえて厚さが40~50nmの(111)配向した蒸着金薄膜を堆積し、エポキシ密着層を用いて石英基板に固定化することで光透過性電極を作製した。本電極を用いて分光電気化学セルを組立て、紫外・可視分光電気化学測定に供したところ、波長500nm付近を中心として強い光の吸収を持つものの、Fe(CN)_6^<2+/3+>の電極反応に対して負の電位印加に対して420nm付近の光の吸収の減少が明確に検出でき、単結晶電極が光透過性電極として用いることができることを明らかにした。
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