研究概要 |
近年シリコンデバイスの超微細化および高集積化の進展とともに、半導体集積化技術には電子伝導に伴う様々な問題が顕在化している。そのうちの一つに、素子の発熱があり、現在の冷却技術では安定動作の維持の限界に達している。もう一つに、素子と素子を接続する配線の抵抗成分が増大し、情報の伝達の時間が増大するという問題もある。現在の微細化状況では、微細化が進めは発熱に伴う動作の不安定化と動作速度の遅延の増大という結果をもたらし、微細化のメリットが消失する。電子回路の部品として分子を用いることは、超微細化および集積化の問題を容易に克服すると考えられるが、単純なシリコンデバイスの機能の置き換えだけでは、電子伝導に伴う上記の問題点は未解決のままである。そこで本研究では、現存の電子部品を模倣するのではなく、レドックス中心が直交配向した有機分子を用いて電子伝導によらない情報伝達機能を有するデバイス構築を行う事により、上記問題点の克服を目指す。昨年度に、ヨウ素の置換したテトラチアフルバレノチオキノン-1,3-ジチオールメチドの誘導体を合成し、その単結晶構造解析を行った。その結果、チオカルボニル基とヨード基との間のHalogen bondingにより、2つのレドックス中心を結晶中で直交配向させることに成功した。本年度では、分子末端での直交配向部位の実現を目指し、分子末端にハロゲンとカルボニル基を有するテトラチアフルバレノチオキノン-1,3-ジチオールメチドの誘導体の合成法を確立した。
|