研究概要 |
溶融(CH_3)_3N・mHF(m=3.0,3.5,4.0,4.5,5.0)を調製し、25℃における電気伝導度と粘度を測定した。電気伝導度はmの値が大きくなるにつれて増加したが、それに対して、粘度は減少した。溶融(CH_3)_4NF・mHFのそれらの値と比較すると、電気伝導度は溶融(CH_3)_4NF・mHFの方が、また、粘度は溶融(CH_3)_3N・mHFの方が大きかった。それは、前者のカチオンは、(CH_3)_4N^+と対称であるのに対して、後者のカチオンは(CH_3)_3NH^+と非対称であり、N-H結合に分極が生じているため、水素原子とHFの間の相互作用が大きくなり、その結果、電気伝導度は小さいが、粘度は大きくなったものと考ええられる。また、電気伝導度の活性化エネルギーからも同じ結論が得られ、カチオンの対称性の違いにより物性が異なることが明らかになった意義は大きい。 ついで、CH_3)_3N・mHFを電解液とし、ボロンドープダイヤモンド(BDD)電極とニッケル電極を用いてフッ素化電解を行った。BDD陽極の場合には、電解液中のmの値が大きくなると崩壊するため、(CH_3)_3N・3HFのみを用い、また、ニッケル陽極の場合には、mが4と5を電解液に用いて電解した。いずれもの陽極でも、目的生成物である完全フッ素化物の(CF_3)_3Nが生成したが、陽極生成ガス中での生成割合は7.7〜26.33%で、水素が1から3個残った、フッ素化物の方が多かった。また、ニッケル電極は、電極表面上にNiF-2が生成して長時間の電解が行えなかったが、電解液に(CH_3)_3N・mHF+C_sF・2.3HF混合液を用いることにより、電解の継続が可能になった。それは、ニッケル電極上にC_sNi_2F6を含む電気伝導性被膜が生成したためと考えられる。BDD電極が使用可能であることおよびC_sFの添加でニッケル電極が使用可能になった意義は大きい。なお、Spring8での高エネルギーX線による常温溶融塩の構造解析は、20年度に行うこととなった。
|