研究概要 |
有機ドナー分子DIPSe(Diiodo(pyrazino)tetraselenafulvalene)を用いた超分子有機伝導体のうち、対アニオンとしてPF_6^-等小型の八面体型アニオンを、結晶溶媒としてジクロロメタンを含有する結晶は、含水有機溶媒中で加熱するだけで、ほぼ定量的に原料の中性ドナー分子を回収できることが判っている(J.Mater.Chem.,16,4110-4116(2006))。本研究ではまず、大型の四面体型アニオンであるGaX_4^-(X=Cl,Br)を用いたDIPSe系超分子有機伝導体の結晶作成と化学反応性の有無について検討を行い、八面体型アニオンの場合と同様にチャンネル構造を有する結晶が得られること、および含水有機溶媒中での中性化反応が進行することがわかった。次に、結晶溶媒についても、既報のジクロロメタン以外のハロゲン系溶媒(クロロベンゼン等の芳香族系分子を含む)を用いて系統的な結晶作成を行い、いずれの組み合わせにおいても同様な特性を持つ結晶が得られることがわかった。これらの結果から、DIPSeを用いた有機伝導体結晶の中性化反応(=リサイクル反応)は、対アニオンの形状や結晶溶媒分子に対する依存性は小さく、ヨウ素…窒素型のヨウ素結合が形成する特異なチャンネル構造が重要であることが確認された。また、DIPSeの分子内のセレンを全て硫黄へと置換したDIP(Diiodo(pyrazino)tetrathiafulvalene)を用いた結晶作成についても検討を行った。
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