研究概要 |
本研究の目的は、水素結合や分子間力相互作用を中心とする生体分子間の弱い相互作用を検出するための方法の確立と、弱い相互作用を利用したインテリジェントな分子認識表面の構築を行うことにある。昨年度は、主に認識分子と非特異吸着抑制分子混合膜によるタンパク質認識最適条件の探索につき研究を進めたので、今年度は、非特異的な吸着をより効率よく抑えるための分子設計とこの単分子層の持つ機能の評価、タンパク質認識の実証を中心に行った。 ポリエチレングリコール鎖のうち、機能発現に有効な最小単位とされるエチレングリコールユニット数3のトリエチレングリコール基と、緻密に膜構成が可能な直鎖アルカンチオール(n=2,4,6,8)を併せ持つ分子(TEGCnSH)を合成し、まずこの分子単独で分子層を構築し、非特異吸着抑制能を検討した。各分子の吸着量を、電気化学手法(金基板表面から分子を還元脱離させる手法)により評価した。膜構成に直接関与するアルカンチオール鎖部分が長くなるにつれて単位面積あたりの吸着分子数が増加し(脱離ピーク電気量より評価)、分子間の相互作用も強固になり(脱離電位により評価)、分子の吸着形態も単一になってきており(脱離ピークの半値幅より評価)、より緻密な膜構築が行われていることを確認した。この分子膜は緻密に構成されているため、非特異吸着を完全に抑制できることも確認した。特に従来の高分子材料では抑えにくかった低分子量のペプチド分子(分子量400程度)から、高分子量の生体分子(タンパク質等、分子量数十万)まで、僅か本単分子層一層で完全に抑えられることを確認できた。
|