本研究は、水環境に存在する有害な溶存有機物の除去のための効率的かつ実用性の高い新規除去剤の開発を目的とし、以下のように検討した。 第一に、ヒドロキシアパタイトと25mM塩化鉄(III)水溶液とを25℃、4時間撹拌後、濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥することにより鉄置換型ヒドロキシアパタイトを合成することができた。X線分析、IR分析、EPMA分析の結果、合成した鉄置換型ヒドロキシアパタイトは、アモルファス状のリン酸鉄(III)で表面が覆われたハイブリッド型アパタイトであることが判明した。 第二に、上記の鉄置換型ヒドロキシアパタイトを触媒とした光フェントン分解反応を、基質23μM、過酸化水素10mM、触媒量0.5g/L、ブラックライト照射、25℃、6時間という条件下で行った。基質としては、Alizarin Red S、Alizarin、Neutral Red、Methyl Red、Methyl Orange、Congo Red、Indigo Carmine、Humic Acid、Fulvic Acid、およびAtrazineを用いた。反応の結果、いずれも分解反応が起こること認められたが、特に、Alizarin Red S、Alizarin、Congo Redの基質消費率が90〜99%に達し、無機化率(CO_2)が60%にまで達した。反応時間を20時間にすると、Humic Acid、Fulvic Acidの基質消費率が99%以上に達し、Alizarin Red Sの無機化率が72%まで上昇した。また、Atrazineでは、触媒量を10倍に増やすことにより消費率が36%から90%に上昇した。さらに、FeOOH、FePO_4、Fe_2O_3を触媒とした場合と比較すると、鉄置換型ヒドロキシアパタイトの方が無機化率が2倍以上高く、効果的な触媒であることが判明した。
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