研究概要 |
平成20年度は、平成19年度に引き続き、鉄置換型ヒドロキシアパタイトを触媒として用いた光フェントン分解反応について研究を行ったが、特に、(1)基質の適用範囲の検索と反応条件の最適化、(2)ヒドロキシラジカルの検出、(3)LC-MSによる分解挙動の解明の3点について検討した。まず(1)については、農薬の一種であるアラクロールが基質消費率97%を示した。また、反応条件の検索として、H_2O_2濃度の条件を変えて検討を行ったところ、H_2O_2濃度を増加してもあまり分解性能(無機化率)の向上はみられなかった。これに対し、触媒量や反応時問の増加により基質消費率や無機化率の向上が認められた。しかし、基質が農薬の場合、無機化率は0%という結果に終わった。(2)については、440nmに吸収波長をもち、ヒドロキシラジカルと反応性の高い試薬であるN,N-ジメチルアミノ-4-ニトロソアニリン(DMNA)を用いて、光フェントン分解反応と同じ条件下、DMNAの消費率を調べた。その結果、DMNAは時間とともに消費され、ヒドロキシラジカルが生成していることが確認された。この実験におけるヒドロキシラジカル生成量を比較したところ、鉄置換型ヒドロキシアパタイトは、水酸化鉄FeOOHやFePO_4・2H_2Oよりも約1.5倍多く生成し、酸化鉄Fe_2O_3とは同程度であった。さらに鉄置換型ヒドロキシァパタイトは、他の鉄化合物触媒にはみられないDMNAに対する高い吸着性も示した。(3)については、アトラジンの光フェントン分解反応の反応溶液のLC-MS解析を行った。その結果、脱アルキル化物、ヒドロキシ置換生成物、オレフィン化合物、エポキシ化合物が多数確認された。以上、(1)〜(3)の結果から、鉄置換型ヒドロキシアパタイトは光フェントン反応の触媒として有用であり、水処理剤としての応用が期待されることが判明した。
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