本研究は、北海道・道北地方において大量に排出・廃棄され続けている「ホタテ貝殻」の有効利用を目指し、(1)様々な基板上に酸化カルシウム薄膜を形成する技術を確立する、(2)調製した材料を「水質浄化材」として応用しその浄化機能を検討する、ことを目的として実施した。平成20年度については(1)の成果について報告する。 (1)高周波スパッタリング法による酸化カルシウム薄膜の形成 高純度の酸化カルシウム粉末から作製したターゲットを用いて、種々の条件下、ガラス基板上に酸化カルシウム薄膜を形成した。スパッタ時間・RF電源出力・基板温度を変化させながら、得られた膜の構造や形態、厚さ等に及ぼす影響を検討した。その結果、スパッタリング時間を長くすると、初め水酸化カルシウムの単一相であった膜が酸化カルシウムとの混合相に変化し、その後時間とともに両相が成長していく様子が認められた(RF出力100W、基板加熱なし)。20〜100分間のスパッタで得られた膜厚は0.65〜1.05μmであり、いずれも平滑な連続膜であった。RF電源の出力を50〜125Wまで変化させた場合には膜の構造や結晶性に大きな変化はなく、膜厚は約0.85〜1.15μmまで変化した(60分間、基板加熱なし)。基板温度を加熱なし〜350℃まで変化させた場合、275℃までは明確な水酸化カルシウム単一相のピークが認められたが、300℃を超えるとそのピークは消失し、結晶性が失われることがわかった。このとき、基板温度によらず膜厚は約0.75μmで一定であり、表面形態にも大きな変化は見られなかった(60分間、100W)。 本来並行して行うはずであった「貝殻焼成物ターゲット」を用いての薄膜作製は、ターゲットの外注作製が遅れたため、期間内に実施することはできなかった。今後はその貝殻焼成物薄膜を種々の条件下で作製し、その構造・電気的特性・水質浄化能等を検討する予定である。
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