本研究は、蛋白質模倣鎖であるペプチド骨格におけるらせんの持続と反転に及ぼす要因を明らかにする。異常アミノ酸残基からなるアキラルシーケンスを含むペプチドを用い、そこに様々な内因的効果および外因的効果を与えたとき、誘導されるらせんの巻き方向を調べる。これらの結果に基づいてらせん構造の持続・停止(反転)に関する知見を得る。本年度は主として以下の情報を得ている。 アキラルセグメントのN末端側にキラルセグメントとC末端近傍にキラル残基を導入したペプチド類について、円二色性スペクトルを外部条件を変えて測定した。その結果、条件の違いによってアキラルセグメント部分の巻き方向に影響を与えることが分かった。さらに、エネルギー計算により、ヘテロキラルヘリックス(らせん反転)とホモキラルヘリックス(らせん持続)の安定構造を推定した。 また、タンパク質らせん末端部位のアミノ酸シーケンスとらせんの持続・停止(反転)の関係を理論的に調べた。エネルギー計算による安定構造から、巻き方向の持続と停止はアミノ酸の種類に大きく依存することが分かった。 さらに、他の幾つかのらせん形成性ペプチド類について、不斉情報の持続性についての研究を行った。即ち、ペプチド鎖の内部に導入したキラル残基の不斉情報あるいは外部分子の不斉相互作用によって、アキラルセグメントに誘起される不斉構造を調べた。キラル分子間相互作用がペプチド鎖末端に起因するもの、ヘリックス鎖を結合させたものあるいは水溶液系での不斉情報の持続現象に注目した。らせんの持続と反転を総括するための基礎的情報を収集することが出来た。
|