研究概要 |
ミオ-イノシトールがDMSO及びDMA/LiClに溶解することがわかり、この均一系を反応メディアとして位置選択的置換基導入法としてなりうるか系統的に検討する事をH19年度の目的とした。 ミオ-イノシトールはメゾ体であり、6個の水酸基のうち1,3位のそれが他に比べて反応性が高いことを利用して各種二置換化反応を行った。その結果、シリル化(t-ブチルジフェニルシリルTBDPSの導入)、スルホニル化(p-トルエンスルホニルTsの導入)がとりわけ高い収率で目的物を与える事が明らかとなった。関連したジシロキサニル(テトライソプロピル-1,3-ジシロキサニルTIPDS)基の導入でも1,6:3,4-ビス体が定量的に得られることもわかった。 一方、モノ置換体の合成についても検討を行った。アシル化は二塩化ジブチルの共存下で高い選択性で1位モノアシル体が得られたが、その一般性について、今後の検討が必要である。また、クロロ炭酸アルキルによるカーボネート化はスズ試薬を使わなくてもモノ置換体を選択的に与えることを見いだした。 これまで1,3-二置換体の合成の報告すらなく、行うとすれば5工程を要すると考えられる。また、モノ置換体の合成も従来は多段階を要していた。しかし今回、ミオ-イノシトールを可溶化する置換反応法によって1,3二置換体が一段階で合成できる事を明らかにした。同様に無保護でモノ置換体を優先的に得る方法を見いだすことができた。有用な合成法として今後利用できるものと期待される。
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