圧力は分子間距離を連続的に変化せることが可能であり、酵素分子の中でも空間的隙間が大きく揺らぎも大きい活性部位のサイズを制御できる可能性がある。アルコール脱水素酵素(ADH)は基質エタノールとのKmによりクラス分けされ、活性部位のサイズはClass IからClass IIIに行くに従って大きくなる。本研究ではClass I、 Class IIおよびClass III ADH、基質には炭素数が2〜6の直鎖アルコールを用いて、活性や基質特異性が制御可能かどうか明確にすることを目的とした。その結果、 ADHの活性は加圧により変化し、 Classの違いにより圧力に対する挙動は異なった。 Class I ADHでは加圧により全ての基質アルコールに対して酵素反応は促進されたが、 Class IIおよびClass III ADHでは基質アルコールのサイズにより異なり、基質のサイズが小さいと酵素反応は抑制され、大きくなるほどほどより効率よく反応することがわかった。次に、 Class II ADHの基質アルコールの炭素数に対して△Vをプロットしたときの傾きはClass I ADHの3倍程度になりClass IIの方が圧力に対して敏感であることがわかった。また、活性部位のサイズが最も大きなClass III ADHではエタノールが基質の場合加圧と共に初速度はわずかながら減少するのに対しヘキサノールでは大きく増加する事はわかった。従って、ADHの種類によれば加圧により活性部位のサイズを変化させ、反応を制御することが出来る可能性があることが示唆された。
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