申請者らは、環境中の酸素・一酸化炭素などの小分子をセンシングするガスセンサータンパク質が有する、小分子の結合によるタンパク質構造の変化による情報伝達に着目し、そのモデル化及び新機能性分子の開発に取り組んでいる。これまで、内因性一酸化窒素(NO)の捕捉検出試薬として用いられてきた鉄-ジチオカルバメート錯体を骨格として、ジチオカルバメートの置換基にαヘリックスを形成しやすいペプチドを伸長することで、エタノール、水等の極性溶媒中でTriple helix bundle構造を有する錯体が形成されること、また、NOの鉄への結合によりbundle構造が崩壊すること、ヘリックス長を短くすることでbundle構造の崩壊温度を低下させることなどを明らかにしてきた。本年度は、本鉄錯体-ペプチドコンジュゲートを細胞などの生体試料へ応用を図るための前段階として、ペプチドが形成するヘリックス長を基本物質としている4ターンのもの(bundle構造の崩壊温度が約27℃)より長くしてbundle構造の安定性について検討した。その結果、ペプチド長を長くすることによって、bundle構造の崩壊温度を27℃より上昇させることがわかった。この結果より、37℃程度でもbundle構造を維持させることができることから、細胞培養系でのNOの結合によるbundle構造崩壊のスイッチングが可能になった。これらの知見は本新機能性分子のドラッグデリバリーシステムとしての応用に対して重要な基礎データである。
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