金ナノ粒子を固定化した分子認識高分子をセンサー素子として用い、環境ホルモン(アトラジン)の表面プラズモン共鳴法(SPR)による検出について以下のように検討を行った。 1)SPRセンサーの構築とアトラジンの検出 メルカプトウンデカン酸で修飾した金ナノ粒子(粒子径:約5nm)を含む重合反応溶液を調製し予めアリルメルカプタンで修飾した金基板を被覆し、さらに加熱することによってセンサー素子を得た。なお、重合反応溶液は、メタクリル酸(モノマー)、エチレングリコールジメタクリレート(架橋剤)、ジメチルホルムアミド(希釈剤)、アトラジン(鋳型分子)、AIBN(重合開始剤)を混合したものである。このセンサー素子を装着したSPRセンサー装置を用いて、アセトニトリル中でアトラジンの検出を行ったところ、約5pMまでのアトラジンが検出可能であり、極めて高感度な低分子量脂溶性化合物用センサーが構築されたことがわかった。 2)SPRセンサーの選択性 アトラジン以外の農薬(アシュラム、クロルピリホスなど)について、同様の検出を試みたところ、いずれもアトラジンと比較してその応答値は小さく、鋳型分子として加えたアトラジンに対して選択的応答を示すことがわかった。また、アトラジンを鋳型分子として加えなかったセンサー素子についても評価を行ったところ、感度・選択性ともに大きく劣るという結果が得られ、鋳型重合法(分子インプリンティング)が有用であることが示唆された。
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