研究概要 |
本研究の目的は、生体関連化合物へのフッ素の導入及びフッ素の利点を用いた構造解析手法の開発を元に、フッ素の特徴による生体関連化合物の機能変換、特にピロールやポルフィリン色素の特性を生かした抗腫瘍活性やバイオミメティック触媒としての可能性を明らかにすることである。 ピロール、ポルフィリン、ヘムのフッ素化による機能変換 これまでに合成したモノフッ素化ピロールを原料に、これまでに例のないF基多置換ポルフィリンとして、目的物の一つである2,3,7,8-TFPを微量ではあるが合成できた。しかし、ポルフィリンの環化収率が非常に低いので反応経路・反応条件等の検討を行い収率の向上を図る必要がある。 また、F基とCF_3基が混在したモデル化合物として、ポルフィリン環構成ピロールのβ位にF基、ポルフィリン環メソ位にCF_3基が入るようなモデルを考え、その反応経路を設計した。まず、ピロール環β位の二カ所にF基を含むフッ素化ピロールを原料にそのα位にCF_3基を導入するため、トリフルオロアセチル化を行った。しかし、導入したトリフルオロアセチル基のカルボニル基の還元反応がほとんど進行せず、ポルフィリンへの環化反応には至っていない。モデルピロールであるフッ素を含まない無置換ピロールでは、60%前後の収率でトリフルオロアセチル基の還元反応が進行することを確かめているので、今後、フッ素置換によるピロールの反応性等への影響を検討する必要がある。
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