研究概要 |
本研究の目的は、生体関連化合物へのフッ素の導入及びフッ素の利点を用いた構造解析手法の開発を元に、フッ素の特徴による生体関連化合物の機能変換、特にピロールやポルフィリン色素の特性を生かした生体触媒等の可能性を明らかにすることである。 ピロール、ポルフィリンのフッ素化による機能変換 フッ素基の導入による機能変換として、F基多置換体モデル及び、F基とCF_3基が混在したモデル化合物の合成を行った。まず、目的物の一つである2,3,7,8-TFPの環化収率を上げるために、ポルフィンの環化で利用される疑似置換基(トリメチルアセトアルデヒド基)の利用を試した。環化収率は3.4%で疑似置換基がメソ位に導入されたポルフィリンを得たが、それに続く、脱アルキル化反応が進行せず、結果的には環化収率の改善には至らなかった。 また、F基とCF_3基が混在した2,3,7,8,12,13,17,18-オクタフルオロ-5,10,15,20-テトラキス(トリフルオロメチル)ポルフィリンの合成は、当初ピロールトリフルオロアセチル基の還元反応が進行しなかったが、反応条件の検討により20%前後で得ることができた。その後のポルフィリン環化では、蛍光成分はでるものの、重合物が主成分となり、酸触媒、溶媒、配位性金属の組合せを検討する必要がある。 フッ素ピロール、ポルフィリンの物性評価、 ポルフィリンの前駆体であるピロールでF基の置換による効果が顕著にみられ、置換度が高くなるにつれて、脂溶性の向上等、溶媒、反応性に及ぼす大きな効果が観察された。 フッ素置換モデルの利用 これまでに合成したF基とCF_3基がそれぞれ1つ或いは、2つ置換したモデル化合物を使い、再構成したミオグロビンにおいて、フッ素の電子的効果による酸素と一酸化炭素の親和性(識別能)が制御されることが明らかになった。
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