今年度は、主に以下の3点について重要な成果を得た。 1.キノンプールの合成経路の改良。これまで報告したキノンプールはベンジルエーテル結合を多数有しており、キノンの結合様式に制約があった。このため、アミド結合で構成される新しいキノンプールを考案し、合成に成功した。この合成においては、異なる官能基に互いに直交する保護基を導入しておくことが鍵となっており、後述の三元系キノンプールなどの複雑な分子への適用が可能である。この成果により、キノンプール合成の自由度が飛躍的に増し、より興味深いデザインを実現する可能性が開けた。 2.二重機能化キノンプールへの展開に向けた新しい金属錯体の合成。キノンプールの機能をさらに高度化するため、ヒドロキノン→キノンの変換と共役する反応が必要である。この反応を実現させる目的で、新しい金属錯体を設計し、その合成に成功した。 3.キノンプールへの新たな反応点の導入。これまではキノンプールに光吸収部位としてのポルフィリンを結合した二元系分子で光反応を研究していたが、さらにニトロキシドを導入した三元系分子の合成に成功した。これと関連して、分子間反応ではあるが、ニトロキシド/ポルフィリン/キノンの三元系で可視光照射によるアルコール酸化反応を実現することができた。この成果は光合成モデル系でアルコールを電子源にできることを示唆しており、次年度の三元系キノンプール分子への展開が期待できる。
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