コアに光機能性部位を有するデンドリマーをターゲットとして研究を行うことを目的として来たが、本年度は、コアにフタロシアニンを持つ化合物を合成し、その光特性について、さまざまな測定条件並びに測定手法を用い、測定結果を得た。用いたフタロシアニンは、有機溶媒ならびに水に難容性であることが知られているが、今回、このフタロシアニンに脂溶性ならびに水溶性の置換基を有するデンドロンを導入し、その光挙動について検討を行った。デンドロンの導入部位についても、フタロシアニン環に水平な位置と垂直な位置の2通りの方法を試みた。また、デンドロンの繰り返し回数によってデンドリマーの世代を定義するが、今回はゼロ世代から3世代のものを合成し、その世代効果についても検討した。 脂溶性デンドリマーの揚合には、世代やデンドロンの置換位置に依存せず、いずれにおいても、均一分散した吸収スペクトルならびに蛍光スペクトルが得られた。これは、デンドリマー化することにより、低世代においても分子間の反発が効率よく生じ、分子間の会合を抑制していることを示している。一方、水溶性のデンドリマーにおいては、低世代においては典型的なフタロシアニン会合体に由来する吸収スペクトルが得られ、蛍光強度も自己消光によって大幅に減少した。しかし、その世代があがるにつれ、吸収スペクトルは会合体を形成していない単量体に近い形に変化し、特に水平に導入したものに比べて、垂直に導入したものは、世代の効果がより、顕著であり、会合体形成を抑制するためには、デンドロンを垂直に導入した方が効果的であることを明らかにした。また、その光化学特性として、ガンの光力学療法で用いられる一重項酸素の発生効率について検討を行ったが、3世代のデンドリマーにおいては、水平のものは、水溶液において一重項酸素の発生効率が1/40に減少したが、垂直のものは1/3程度であり、非常に良好な特性を示した。
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