研究概要 |
リチウムイオン電池のさらなる高容量化を目指して負極材料の研究が行われている.本研究で注目したMg_2GeとSiは,現在実用化されている炭素材料よりも大きな充放電容量を持つため有望な代替材料である.Mg_2Geは合金系電極の中でサイクル寿命の面で秀でているが,さらなる容量の向上が望まれる.一方,Siは非常に高容量ではある反面サイクル寿命が乏しい.そこで,両者のコンポジット厚膜電極を作製することにより,それぞれの長所を併せ持った電気化学的特性を有する電極が得られるのではないかと考えた.本研究では,基板-活物質間および活物質同士を強く密着させることができるガスデポジション(GD)法を用いて,このMg_2Ge/Siコンポジット厚膜電極を作製し,その電気化学的特性を評価した.得られたMg_2Ge/Siコンポジット厚膜電極に対する1サイクル目の充放電曲線を,SiおよびMg_2Ge単独電極の結果と比較したところ,Mg_2Geと適量のSiとを混合する(Mg_2Ge:Si=7:3)ことにより,放電容量がMg_2Ge電極の約2倍に増加することがわかった.充放電曲線にSiとMg_2Ge電極それぞれに特有のプラトーが混在していたことから,両方の活物質が充放電反応に関与していることが考えられる.よって,混合したSi分の容量がMg_2Geの容量に加わり,放電容量の増大に至ったと推察できる.また,これらの電極の放電容量のサイクル依存性を調べた結果,Mg_2Ge/Siコンポジット厚膜電極はサイクル数を重ねても高い放電容量を維持したままであり,200サイクルを経てもその容量は炭素電極の1.6倍の値である約600mA h g^<-1>を示した.このように容量の増加に加えてサイクル安定性も向上したのは,Si粒子の周辺に柔軟性のあるMg_2Ge粒子が存在することによる応力緩和のためではないかと考えられる.
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